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銀の鈴社は、〈花や動物、子供たちがすくすく育つこと〉を願って活動しています

武田元治先生とのお別れ◯西野真由美

解釈学会の名誉会長、大妻女子大学名誉教授の武田元治先生がお亡くなりになりました。
いつも柔らかな笑顔でお導きくださった武田元治先生は、柩の中でもそのままの穏やかなお顔でした。
にこやかに微笑みながら煙草をくゆらせ、背筋をピンと伸ばして、英國屋のスーツをシャッキリ着こなしていらした元治先生でした。
子どもの頃に聞いた元治先生の落語。
どんなお話だったのかは定かではありませんが、旅館の大広間の舞台で、お座布団にまっすぐ座られた元治先生のお姿が、普段とのギャップがありすぎたのか、何故か思い出されます。
あの頃は、地方での解釈学会の夏の全国大会が、唯一の家族旅行でした。
研究発表の長い時間を、どうやってやり過ごしたのか、流石に記憶にありませんが、旅館やお寺に泊まったことなどは、断片的に覚えています。
元治先生の落語姿も、そんな一場面。
桜散る春の日のお別れは、先生が研究されておられた西行さんの歌を思わせてくれました。
かつて身を引きたいと申し出た時に、お身内としてぜひとも残っていただきたいと元治先生にいわれ、退くことを留まったこと。
この3月上旬にいただいたお葉書にも、これからも解釈学会を支えてくださいとありました。
まるでご遺言のように思えます。
『100人で鑑賞する百人一首』。
元治先生にその復刊を見届けていただけたことだけが、今となっては私の救いです。
とても喜んでおられたと息子さんから伺い、最後のご挨拶では、解釈学会のことを話す時の父は、いつも楽しそうでした、とも仰っていただきました。
息子さんのご挨拶のように、あちらにいかれた元治先生は、藤原俊成さんにあれこれお尋ねなさっておられるかもしれません。
大好きな元治先生、さようなら。
そして、どうもありがとうございました。
西野真由美

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