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銀の鈴社は、〈花や動物、子供たちがすくすく育つこと〉を願って活動しています

『北御門二郎 魂の自由を求めて』(銀の鈴社)◯西野真由美

『北御門二郎 魂の自由を求めて』(銀の鈴社)のご紹介です。
トルストイの「絶対非暴力」「絶対平和」の思想にうたれ、死刑覚悟で良心的徴兵拒否をし、農業に勤しみながらトルストイ作品の翻訳に精魂を傾けた北御門二郎さんの伝記です。(小学校高学年以上対象)
トルストイは、翻訳について次のように述べています。
「ホメロスの物語を翻訳と原書で読み比べてみると、翻訳のホメロスは蒸留水のよう。
原語のそれは泉の水のよう、この泉の水は、それに浮かぶ木の葉の匂いや草根の香りがする」
北御門さんは、泉の水のような翻訳を目指して、『イワンの馬鹿』のイワンのように農業に勤しみ、まさに晴耕雨読で尊敬するトルストイ作品に対峙してきたのです。
著者のぶな葉一さんは、北御門二郎訳のトルストイ『文読む月日』(上下巻、地の塩書房刊)を刊行するために地の塩書房を起こし、ちくま文庫(筑摩書房)での同書刊行に尽力した方です。
トルストイの『文読む月日』は、トルストイの言葉も含めて、彼が選んだ古今東西の名言を、一年365日分収載した名著です。
かつて、東京ビックサイトで開催されたブックフェアの特別講演で、姜尚中さんが話された時でした。
最後の質疑応答で、「これだけは持っていていいと言われたら、何の本を選びますか?」という質問に、姜尚中さんは、トルストイの『文読む月日』
と、即座にお答えになっていました。
本書は、北御門さんへの崇敬の念と、深い信頼関係が根底に流れるあたたかな伝記です。
ことに、北御門さんと祖母の塩見スマさんとのくだりは秀逸です。
志をもって生き抜いた人。
その志を育んだ周りの人の、背筋の伸びた生き方に打たれます。
後半では、レフ・トルストイについても学べます。
トルストイの「絶対平和」「絶対非暴力」の思想は、インドのガンジーや、アメリカのキング牧師にも大きな影響を与えました。
「ヨーロッパが人類に寄与した全ての偉大なものをあげるとき、ロシア人が恥じて、頭を下げずにすむには、彼一人さえいれば充分であることをますます確信するようになった。そしてそこには、愛国主義などなんの役割も果たしていない」
これは、トルストイの著書『イワン・イリイッチの死』を読んだロシアの作曲家、チャイコフスキーの言葉です。
『北御門二郎 魂の自由を求めて』で、真の自由と真の平和について、考えるきっかけとなればと願います。
ぶな葉一さんには、他に下記の創作作品(ともに銀の鈴社刊)があります。

『泣いたゼロ戦』
小学校低学年くらいから
『山のみち』小学校中学年くらいから
『まぶしい涙』小学校中学年くらいから
西野真由美

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