新刊『トカゲのしっぽ 約束のかたち』
発行日:2021年11月12日
著:須長 和子
絵:佐藤 真紀子
出版社:銀の鈴社
判型:四六
ページ数:32
ISBN:978-4-86618-120-2 C8093
自粛のときの思いがけない産物
日々静かに足元を見つめる時間が多いこの頃、ふと気づくと、デスクの上は自分史の原稿が、、、。
一年がかりでついに刷了紙をまえにして感無量。
著者は90歳。30年間、40数回のヨーロッパ旅行記。3冊目はすべての旅行をダイジェスト的に収載したい、おまかせしますとのご依頼でスタートした編集作業。丁寧な旅日記はどれも臨場感満載で、削除する難しさとの格闘でした。
もう一冊、編集を終えて同時に印刷待ち。やはり80代という。どちらも女性。
しつかりしたご指示で、お二人とも電話の声だけの接触ですが、その確かさが伝わってきました。
ハルピンからの引き揚げの思い出、人生の歩みの中で受けた、周りの人々への感謝、旧仮名混在の文章を整えながら、一番最初の読者として著者の息づかいをたどりました。
感じたことは命の重さ、尊さ、美しさ。
自伝 とは。
こし方をありのままたどり、己が反芻し、これからの人に伝え遺す。
遺産としての世界で一冊だけの神聖なミッション。
身をひきしめながら開く次なる原稿は、ドイツと日本の架け橋として受賞された実業家の、思い出の交友録。現役の著者は、ご多忙な生活で返事をいただくのも忘れた頃。焦らず、心合わせて伴走せねば。
あっ、昨日の電話は写真集をと。
人それぞれ、走り続けた中でのひと休み。その思いがけない名作の産物です。
本という著者の分身のお産に携わる産婆役は、今日も元気です。
おかげさまです。