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銀の鈴社は、〈花や動物、子供たちがすくすく育つこと〉を願って活動しています

藤本美智子詩集『心のふうせん』○西野真由美

藤本美智子詩集『心のふうせん』(ジュニアポエムNO.231)のご紹介です。
前詩集『緑のふんすい』(ジュニアポエムNO.206)の伸びやかな世界はそのままに、今度は簡潔で軽やかな短詩のロンドではじまる楽しい詩集です。
  つゆ
月のしずく 朝には葉っぱの上
  くもったガラス
見えなくていいこともあるか
  おちばの道を
ごめんね ごめんね ごめんね
ウイットに富んだ、キュッと引き締まったポエムたちです。
後半の詩でも、藤本さんらしい好奇心に満ちた、あたたかな眼差しにあふれたポエムが続きます。
そして、あとがきにかえて収載された一連の「風(ふう)さん」の詩は4編。
「やっぱりいない」から「にじ」までの4編には、飼犬を通して、あるいは飼犬と一緒に、逝ってしまった家族を偲ぶ作者の、懸命に踏ん張って堪えている姿が彷彿として迫ります。
核家族化が進んだ現代では、本物の死、身内の死を体験することが、大人でさえ少なくなっています。
あとがきにかえて収載された4編を通して、死が突きつける喪失感と、生が教えてくれる希望とを感じていただけたらと願います。
西野真由美

『ゆずりは』○西野真由美

新谷亜貴子作『ゆずりは』が刊行されました。
処女作『君の声が聞こえる』につづく2作目の小説です。
「おくりびと」という映画がありました。
納棺氏という仕事の存在を、私はそれで知りました。
葬儀を司る仕事の尊さをあらためて痛感する作品です。
本作の冒頭は、葬儀社の面接会場。
茶髪にピアス。粗雑な言葉に折り目のない態度。
チャラ男と呼びたいような高梨歩に、会社は当然のように不採用の決定をだそうとします。
その時、主人公の水島は、なぜか気掛かりになって、自分が責任を持って指導しますからと、採用を願いでてしまうのです。
無防備な心のままにぶつかってゆく高梨によって、いくつもの葬儀、その死と生が、葬儀という儀式をこえてオムニバスで語られます。
遺された人に寄り添って故人を悼む高梨。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの高梨の言動が、妻の自死で頑なになっていた主人公や周囲の人々の心をほぐし、解き放っていきます。
ゆずりはのように命のバトンをつなぎながら様々な人生を描きだす本書は、読後、心の中に小さな温石(おんじゃく)をそっと置いてくれるでしょう。
とても小さな温石ですが、静かにじんわりとあなたの心をあたためてくれる作品、 それが『ゆずりは』です。
西野真由美

平成の立原道造○西野真由美

火星雅範詩集『ささぶね うかべたよ』(ジュニアポエムNO.23 )のご紹介です。
印刷所から届いた刷りあがったばかりの一部抜きを手にして、編集長は言いました。
「現代の立原道造だわ」と。
蒼く澄んだ透明な水底のような哀しみと、まっすぐにのびた一筋の眩い白い光のような祈り。
優しさに満ちたこの詩集には、そんな色を感じます。
火星さんは、わずかに自由が効く舌で、キーボードを手繰るそうです。
脳性麻痺。
中国東北部で生まれ、二歳で母を亡くし、父と日本へ引き揚げる船中で高熱を発して以来、と。
重く厳しい来し方を前に、言葉を失います。
火星さんは、いつもカラフルなハンチングを斜めに被って、車椅子で現れます。
いつもにこやかな笑顔を絶やさない火星さんですが、私の言葉に強く心を動かされた時に、感極まって涙をうかべ、身体を仰け反らせて共感、共鳴を示してくださったことが何度かありました。
その度に、いつも付き添っている若者が、すぐに火星さんを抱いて、車椅子から落ちないように守ってくれるのです。
彼の純粋なリアクションと、その行為の重さとに、私は立ち尽くしてしまいました。
けれども、それだけではありません。
なにより私が心打たれたのは、彼の詩に対する、ご自分の作品に対する態度です。
揺るがない心棒を持ちながら、あくまでもしなやかさを忘れない。
他者の見方や感じ方を拒絶せず、謙虚に許容する姿勢を、彼はこう言いました。
「(拒絶していたら)作品の幅が広がらない」と。
作品は、発表された時から作者のもとを羽ばたいていくものです。
読者は、作者の想いをそのままに受け止めてくれる人ばかりではありません。
様々な受け止め方を許容する、あるいは認めることで、作品も作者も育っていく。
本は子どもと同じ。
子育ては、親育てでもあるのです。
私たちの常の想いを、火星さんは一言で表現してくれました。
挿画は、西川律子さん。
『もうひとつの赤ずきんちゃん』、『もうひとつのかぐや姫』、二冊の絵本の作者です。
完全な抽象ではないけれども、具象でもない。
そんな間(あわい)の表現で、火星さんの作品世界を描いてくれました。
火星雅範詩集『ささぶね うかべたよ』は、信仰と愛のまなざしに満ちた詩集です。
西野真由美

都立両国高校附属中学校での公開授業『子どものための少年詩集2013』

今日8月28日(水)、東京都立両国高等学校附属中学校で、銀の鈴社の『子どもための少年詩集2013』(今秋10月刊行予定)を活用した公開授業が行われました。
月曜日から始まった夏期講習の、この授業としては2時限目の1年3組が対象です。
指導されるのは、国語科教諭の杉本豊先生。
ここでは、本になる前の校正刷り(ゲラ)の段階での詩作品を読んで、心に響いた3作品を選ぶというのが最終目標です。
今回の試みには、両国中学の1年生と2年生、各3クラスの約120名が参加してくれました。
1年生は杉本先生、2年生は大島先生のご指導です。
本当は、1冊分の校正刷りすべてを各自で読んで、そこから好きな3作品を選んでいただきたいのですが、限られた授業時間の中では不可能なこと。
そこで、高校の国語科教諭、高澤昌利先生のご提案で、1冊分約120ページを1学年ずつに振り分け、3分割(3クラスで分割)の40ページずつに分担しての授業となりました。
前の授業で、各自が40作品を読み、自分の好きな、心に響いた3作品を選び、その理由を用意された用紙に記入します。
そして今日の授業では、4人ずつの班に分かれて、班としてのベスト3作品を選ぶというのがメインでした。
4人の中で、進行係、記録係、発表係等の役割を分担し、各自で選んだ3作品について選んだ理由を発表しあいます。
そして、4人が選んだ3作品、計12作品の中から、班としての3作品を相談しながら決めていくのです。
1年生、2年生ともに、班とクラスでの話し合いを経た次の授業で、あらためて自分の好きな心に響いた3作品を、それぞれの作者へのメッセージとしてその理由を書いて、一連の授業が終了となります。
1年3組は、五十音順の少年詩集の真ん中辺りの40ページが担当でした。
子どもたちのワイワイガヤガヤの楽しいこと!
同じ作品が好きだったり、まったく感じなかった作品に惹かれている子の理由に頷いたり。
班ごとの発表後におこなわれた質疑応答も、最初はぎこちないスタートだったのに、だんだんと活発になって、作品世界への分析へと発展して。
中学1年生の感受性と表現力が言葉となって飛び交うイキイキした現場に同席できたことは、胸躍る刺激的な、ゾクゾクする時間でした。
その後、2年1組での大島先生の授業も見学させていただきました。
大島先生のご好意に甘えての突然の見学です。
偶然にも、1年3組と分担した40ページが同じだったのも幸いでした。
2年生は、班ごとに選ぶ作品を1作品に絞り込んでいて、その話し合いが方法も含めてバラエティに富んでおり、選ぶ作品の多様性とともに、面白く拝見しました。
今回のイベントを担当した銀の鈴社の西野大介は、聞こえてくる会話の中から、今の子どもたちのナマな表現を、流行現象とリンクさせながらキャッチして、その絶妙さを私に話してくれました。
私よりもずっと彼らと年齢が近いからこそのキャッチ。
心に響く詩とは? との大島先生の問いかけに、班ごとにまず回答してから絞った1作品を挙げ、その理由を発表した2年1組。
心に響く詩とは・・・共感できること!
そう答えた、あるいは共感という言葉がはいっていた班の、なんと多かったことか。
感性を研ぎすまして、己の世界へ向き合うのも大切だけれど、読者に響く詩を届けるのも大切なこと。
杉本先生が仰った言葉が、それを象徴しています。
「詩は、作者と読者との共同作業」
作品は、作者が生み出すもの。
けれど、作者の手を離れ世にでた作品は、読者の度量や年齢、経験値によって、さらなる命を授かるのです。
8時40分からお昼近くまでの半日ほどの心底楽しい体験でしたが、ずっしりと重いバトンを受け取った一日でもありました。
公開授業には、大学の先生や私学の理事長、新聞記者等もいらしてくださいました。
記事の掲載予定等がわかりましたら、そして記事になりましたなら、また報告させていただきます。
なお、写真を含めた詳細な報告は、10月刊行予定の『子どものための少年詩集2013』(年刊アンソロジー)に挟み込む「銀鈴ポエム通信32号」と、来春発行する銀の鈴社の「本のカタログ」に収載します。
お楽しみに!
西野真由美

井上靖詩集『シリア沙漠の少年』復刊!

井上靖詩集『シリア沙漠の少年』(ジュニアポエムNo.32)が、井上靖文学館様等のご協力で復刊しました。
下記のように企画展も開催中です。
井上靖文学館 開催中の企画展
井上靖への視座「井上靖の詩・視・詞」展 
会期 2013年7月25日(木)~12月10日(火)

本詩集『シリア沙漠の少年』の初版は1985年8月25日。
四半世紀を経ての復刊です。
収載の43編は、次の7章にわけての収録です。
序詩
母とふるさと

青春

戦いの日
季節の詩
初期の行分け詩から、井上靖の詩作品の本流、散文詩まで。
抒情的な美しい作品から、哲学的な深い思索を誘う作品。
どの作品にも詩としてのきらめきがそこここに潜んでいて、その完成度の高さに圧倒されます。
絵は、駒宮録郎先生。
揺るぎない描写力と高度な技法に裏打ちされた絵が、詩の世界をそっと支えます。
ことに、<戦いの日>に収載されている作品「友」の挿画は、ご自身も出征し、北の大地での抑留生活を経験した画伯ならではの祈りのこもった絵には、その詩作品の胸を掻き毟られるような切なさを、静かに寡黙に伝えます。
本詩集の絵をいただきに駒宮先生のご自宅へ伺った日のこと。
白い御髪の大柄な先生が、緊張で固まっている私に注いでくださった柔らかな眼差しは、今でも大切な宝物です。
少年少女から大人まで。
読者の年齢、体験に応じた感銘を感じさせてくれる詩集『シリア沙漠の少年』と井上靖文学館の企画展。
どうぞ、この奥深い世界を味わってくださいますよう。
西野真由美

七夕とかぐや姫◯西野真由美

銀の鈴ギャラリーでは、絵本『もうひと つのかぐや姫』刊行記念展を開催しています。
竹取物語のもうひとつのお話を、美しい色彩のハーモニーで描いた抽象画の絵本です。
著者の西川律子さんは札幌在住。
北海道には、竹取物語に登場するような竹がないという彼女は、かつて京都で歩いた竹林の強烈な印象を軸に、鎌倉山や竹寺(報国寺)でスケッチを重ねて作品を育みました。
そんな西川律子さんと、平塚の七夕まつりへ行ってきました。
煌びやかなの飾りとともに、私たちを真っ先に迎えてくれたのは、なんと竹取物語でした。
七夕まつりは星まつり。
さまざまな願いが込められた色とりどりの短冊。
西川さんと私も、心そそいで書きました。
例年より早い梅雨明けというニュースに、今宵、織姫と彦星の再会と、それぞれの願いを胸に、多くの瞳が夜空を見上げることでしょう。
世界が平和でありますように
みんなが幸せになりますように
西野真由美

川端康成の新資料発見!

川端康成学会の会員で一橋大学院生の石川偉子さんが、川端康成の新資料を発見しました。
昨夕(6月8日)の朝日新聞夕刊で大きな記事になっています
この発見は、まもなく刊行される『川端文学への視界No.28 年報2013』誌上で、詳しく発表されます。
なお、6月22日(土)の川端康成学会の第160回例会では、石川偉子さんによる新資料についての発表もあります。(参加費500円)
鶴見大学にて。
詳細は下記、川端康成学会のホームページをご参照ください。
http://www.kawabata-kinenkai.org/bungakukai/reikai.html
川端康成学会の例会へは、どなたでも参加できます。
入会も随時承っております。
また例会会場では、学会の機関誌年報(『川端文学への視界No.28 年報2013』)も販売しております。
『川端文学への視界No.28 年報2013』(定価2,625円 銀の鈴社刊)は、来週刊行です。
お近くの書店へご予約いただければ、刊行次第に書店さんへお送りします。
小社ホームページでは、来週末から購入できます。
アマゾン等は、それぞれの機関での登録作業が終わり次第にご購入いただけます。
銀の鈴社(銀の鈴ギャラリー奥)でも、直接ご購入いただくことができます。
  ・・・6月13日(木)以降
川端康成学会や機関誌年報(バックナンバーを含む)のお問い合わせなどは、銀の鈴社までお気軽にお問合せくださいませ。
銀の鈴社は、川端康成学会の事務局窓口でもあります。
銀の鈴社:西野真由美

『C58 坂を上る』井上謙作◯西野真由美

『C58 坂を上る』は、作者、井上謙先生の実体験をもとにしたフィクションで、『路傍の石』や『真実一路』を彷彿とさせる小説です。
作品舞台の主な時代は、太平洋戦争の末期。
蒸気機関車の鑵たきを目指す少年が主人公です。
タイトルの「C58 坂を上る」は、「月山」などの作家、森敦先生の命名。
森敦先生は、井上謙先生がご研究されていた横光利一さんのお弟子さんでもありました。
(井上謙先生は横光利一学会の会長で、解釈学会の顧問でもあられました)
謙先生は、この作品を見ていただいた時に、「大学の教師なんぞは辞めて、物書きになれ」と森敦先生から言われたと仰っておられました。
実体験をもとにしたフィクションなだけに、その描写の細やかさに圧倒されます。
蒸気機関車のC58106に寄せる想い。
そこには、かつての学友の夢も重なります。
これは蒸気機関車を愛し、支えた男達、そして少年達の物語なのです。
病床の謙先生から、お話を伺ったのが昨秋。
原稿をいただいたのが一月。
そして、松本忠さんが急ぎ描いてくださったラフスケッチを病室にお届けした時の、本当に嬉しそうな満足気な謙先生の笑顔が、握手が、私にとっての最期になりました。
謙先生はその翌日、2月8日に亡くなったのです。
ご子息の聰先生、そして教え子のみなさまにお助けいただいて、ようやく明日の法要に間に合いました。
疲弊し切った今の日本に、C58のように、坂を上って欲しいんだ、と、ご自身の苦しさをも顧みずに語ってくださった謙先生。
高邁な強い信念の 崇高な美しさを、私は、そして同席した息子の大介は、謙先生から学ばせていただきました。
合掌
西野真由美

平和をねがう「原爆の図」丸木位里・俊夫妻展◯西野真由美

絵による平和運動家、丸木夫妻の伝記『平和をねがう「原爆の図」丸木位里・俊夫妻』(楠木しげお文、くまがいまちこ絵)刊行記念展がはじまりました。
丸木ご夫妻のご遺族や、丸木美術館様のご協力をいただいて、3月11日まで開催します。
若いカップルや熟年夫婦。
山歩きの方やご近所の方。
様々な年齢層の方々が、静かにギャラリーを訪れてくださっています。
愚かな人間が自分たちでつくりだしてしまった真の地獄が、そこにあります。
戦争や災害から、平和な日々を守ることの意味を、改めて考えたい展示です。
楠木しげおさん所蔵の丸木夫妻の写真や、くまがいまちこさんの原画も展示。
会期中は、丸木夫妻の絵はがきや図録なども展示販売しています。
西野真由美

「ラジオ深夜便」3月号発売中◯西野真由美

「ラジオ深夜便」3月号が発売されました。
年末に放送された阿見みどりの「花が好き自然が好き」、おかげさまで巻頭カラーで収載です。
店頭発売は18日から。
阿見宛の掲載誌をみなで眺めていたら、早速問い合わせの電話が…。
「こういう絵を探していたんです、ずっと。
あぁ、本当に生きていてよかった!」
電話口の向こうから、弾んだ声が響いてきました。
「ラジオ深夜便」の定期購読者の方からでした。
12月19日の放送では、万葉集や野の花に寄せる阿見の想いの原点や原風景などを、須磨佳津江さんが巧みなインタビューで引き出してくださいました。
絵を支える背景や来し方など、須磨佳津江さんのリードで、家族や姉妹など周りのみなが驚くほどスムーズに話せていました。
そして誰よりも本人が、一番驚いていたのでした。
けれどもやはりラジオは聴覚で受け止めるもの。
今回の冊子では、巻頭カラーというありがたいご配慮で、阿見の描く野の花たちをいくつか収載してくださいました。
鳥獣戯画に惹かれたのがが原点という阿見の、絵巻物のような巻子(かんす)に描いた万葉野の花や早蕨、スミレなど。
カラーで収載された野の花たちは、百聞は一見に如かず、と、阿見の姿勢「自己主張ではない、野の花のメッセンジャー」を、伝えてくれたのでした。
このブログを書きかけのまま出社した昨日は、夕方から知人のギャラリートークとワインパーティがありました。
急ぎ仕事の片が付かず、結局ギャラリートークには間に合わず、パーティも途中参加だったのですが、そこで件の須磨佳津江さんに再会しました。
須磨さんは満面の笑みでハグしてくださって、嬉しい幸せな再会でしたが、早くブログにアップなさいというお導きのようでもあり、心引き締まる偶然の再会でもありました。
西野真由美

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