ある日の軽井沢で
ランチを予約しているレストランへ向かう軽井沢の駅前で、子どもの泣き声が聞こえてきました。
右手で泣きじゃくる女の子を、左手で弟らしき幼い男の子の手を引いて歩く母子でした。
女の子はとても悲しそうに、訴えるように泣きじゃくり、男の子はオモチャをしっかり抱き抱えながら、その右手をお母さんに委ねて歩いていました。
私がバッグからカルピスの小さなミントを手に近づくと、お母さんは女の子にごめんね、ごめんね、と言っています。
泣きじゃくる女の子と男の子に、手を出して、と声をかけて小さなカルピスミントをわけ、お母さんの掌にもお裾分けしました。
女の子のトーンが少し落ち着いたと思ったら、今度はお母さんが泣いてしまったのです。
私は思わず彼女の手を握り、
「大丈夫よ、がんばってね」
と声をかけて、仲間の待つレストランへ向かいました。
どんな事情かはわかりませんが、きっといつか、あんなこともあったねと、笑って思い出せる日がくるはずだから。
早足で歩く母子の後ろ姿を、そんなエールを込めて見送ったのでした。
西野真由美