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銀の鈴社は、〈花や動物、子供たちがすくすく育つこと〉を願って活動しています

人生の総仕上げは 本 の姿で

二月の寒空を苦にもされず連日打ち合わせに来社されるSさん。編集長との会話の中で次々アイデアが膨らんで、今日はお姉さまが愛用された着物をご持参。

表紙はこの着物でまとめましょう。姉妹愛あふれる思い出話は尽きることなく、ふたりの間にそれぞれのイメージが寄り添い楽しいアイデアが具現化していきます。

50年ほど前、山の随筆家田辺重治著「わが詩わが歌」をご遺族に頼まれて故人の袴で装丁しました。その後室生朝子さんに頼まれて室生犀星著「美しい歴史」の特装版をつくりました。その時は朝子さんのこだわりの絵柄を求めて加賀友禅の反物探しに金沢のお店までご一緒したことを思い出します。

そして数年前、お母さまのエッセイ「小さな幸せ」をまとめたいと羽織と着物を組み合わせて50冊ほど形にして喜んでいただきました。

亡き人を偲ぶぜいたくなひとつの姿です。面影がぎゅっと詰まって手にとると心温まる不思議な時間が流れます。

本棚からその一冊を机に置いて、こんな方法もありますという編集長のことばに、きっとSさんの頭の中はありし日の故人の姿があれこれ浮かんできたのでしょう。

「私 元気な今のうちに姉の望みを叶えてあげたいの」白髪の優しい目が眼鏡の奥で細く輝きました。

わかりました。ご一緒にチャレンジしましょう。

新たな目的に向かって、スケジュールの段取りに入ります。

銀の鈴社玄関の手水鉢に
裏庭のおち椿が迎えてくれます

           柴崎俊子記

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