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銀の鈴社は、〈花や動物、子供たちがすくすく育つこと〉を願って活動しています

迎春◯西野真由美

あけましておめでとうございます。
昨年は、新渡戸稲造の生誕150年。
そして今年は、没後60年。
昨秋9月に刊行した『新渡戸稲造ものがたり』、おかげさまで年末に重版となりました。
「我、太平洋の橋とならん」
真の国際人、新渡戸稲造の生き方は、未来を担う子どもたちにこそ伝えたい。
そして今年は、新美南吉生誕100年。
新美南吉や浜田広介のあたたかく美しい日本語。
刺激的な擬音が連なるカタカナ言葉が飛び交っている今。
しなやかな強さを秘める、やわらかな平仮名のような言葉で包まれたなら、今の状況も少しずつかわっていけるのではないでしょうか。
かつてある学者さんから、「あの男は、志賀(志賀直哉)のような文を書く」というお話をうかがいました。
その方は志賀直哉の文章に心酔し、志賀作品を書写しまくったので、志賀の文体がすっかり染み込んだのだ、と。
まなぶはまねぶ。
今年も、まなびまねぶべき規範となるような、そして何より、読む人の心の鈴をチリンと鳴らせるような本を刊行して参ります。
電子書籍も、いよいよ本格的に始動しました。
本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。
西野真由美

NHKラジオ深夜便◯西野真由美

昨夜(19日水曜日の1時~2時)、阿見みどりがNHKラジオ深夜便に登場しました。
どうなることやら、とハラハラしておりましたが、さすがプロの須磨佳津江さんです。
ぶっつけ本番の録音だったはずなのに、ほとんどカットもなく、鮮やかに決めてくださいました。
ラジオを聴いたという方々から、早速続々と反響が寄せられてきます。
電話やFAX、そしてメール。
反響というよりも、強力なエールが次々と届きます。
ホームページのアクセス数も、グッと増えてきたようです。
西野真由美

川越文子詩集『魔法のことば』◯西野真由美

ジュニアポエムNO.224『魔法のことば』(川越文子/詩 山中桃子/絵)のご紹介です。
川越文子さんのジュニアポエム3作目の『魔法のことば』は、NO.153『ぼくの一歩 ふしぎだね』同様、桃子さんの絵で登場です。
前作時には横松姓だった桃子さんも山中桃子さんとなり、早いもので母としての日々の中で絵にむかっておられます。
30篇の詩は下記、四つの部屋で読者の訪れを待っています。
春の交信
お母さんとわたし
ぼくの友だち
仲間たち
現代詩や児童文学でも活躍中の川越文子さん。
タイトルの『魔法のことば』は、作品「魔法のことば」からだけでなく、どんなことばでも、ことばは使う人の思いやりひとつでだれかを元気づける魔法のことばになれる、という思いからです。
あとがきに書かれている川越文子さんの心情です。
あなたにとっての魔法のことばに、出会える詩集です。
西野真由美

井上良子詩集『太陽の指環』〇西野真由美

ジュニアポエムNo.223『太陽の指環』(井上良子詩・銅版画)がうまれました。
ひらがなが多くて、難しい言葉を使っていない少年詩。
けれども、そこに広がっている世界は果てしなく澄んだ深い世界です。
子どもは子どもなりに。
大人は大人として。
その人の経験と感性で、様々に感じとれる詩集です。
表題の「太陽の指環」は、序詩。
今年の5月21日の金冠日蝕。
太古からつづく自然の営みをうけて、タイトルが決まりました。
銅版画の繊細な線が、詩人の震える琴線と響き合う、透き通った詩集。
きっと貴方の宝物になるでしょう。   西野真由美
  きのねっこ
         井上良子
ちきゅうをつかんだ おおきな手
きのねっこ
おしりをのせて みきにもたれて
しんこきゅう
きのうのこと あしたのこと
わすれてすわる
みあげるえだは
あおいそらに
ねっこの思い 伝えようとしている

宮田滋子詩集『白鳥よ』(ジュニアポエムNO.222)◯西野真由美

『白鳥よ』(宮田滋子・詩 牧野鈴子・絵)は、ため息がでるように美しい詩集です。
憂いをまとった気高い白鳥。
その白鳥に金の粉を降り注ぐ満月。
牧野鈴子さんの絵に、吸い寄せられてしまいます。
『白鳥よ』は、宮田滋子さんの童謡活動50年を彩る詩集。
昨年上梓した『さくらが走る』で、今年日本童謡賞を受賞した宮田滋子さん。
サトウハチロー門下生としてスタートして半世紀。
童謡に少年詩にと、常にトップレベルの作品でこの世界を牽引し続けている詩人です。
華奢なお身体の、どこにあれだけのパワーがおありになるのか。
ジュニアポエムNO.222という数字も、『白鳥よ』に相応しく、まるで待っていたかのようです。
4章、42篇の美しい詩集が、ポエムの水面を泳ぎ渡ります。
今の季節にぴったりの作品をご紹介しましょう。
秋のとびら、貴方はどこに感じますか?      西野真由美
 秋のとびら
         宮田滋子
秋へ通じる
季節のとびらは
どこでしょう
玉すだれの咲く
庭かしら
秋へ通じる
見えないとびらは
もしかして
アオマツムシの鳴く
茂みかしら
秋へ通じる
秘密のとびらは
ひょっとして
稲穂の波の
下かしら
     宮田滋子詩集『白鳥よ』(ジュニアポエムNO.222)所収

『俊介とおばあちゃんの竜天山』◯西野真由美

『俊介とおばあちゃんの竜天山』(中村千鶴子作)のご紹介です。
パパとママ、5年生の琴美おねえちゃんとマンションで暮らす俊介は2年生。
一人着らしの田舎のおばあちゃんが怪我をして、一緒に暮らすことになったところから物語が始まります。
山もなく自然に乏しい街中の暮らしで、おばあちゃんは頑なに殻にこもるようになってしまいます。
やがて少し離れた大きな林の奥にある<なごみの家>という施設へ入ることになったおばあちゃん。
訪れた俊介や、幼馴染のとみちゃん等との交流から、前を向き始めるあきおばあちゃん。
できなくなったことを数えて嘆くより、できることを見つけて始めてみよう。
なごみの家の仲間にも呼びかけて、止まっていた時間が動き始めます。
核家族化で、年をとっていくこと、その過程を身近に知らない子どもたちが、年をとって弱った老人を受け止めることの現実。
それは、大人も同じです。
年老いたおばあちゃんにも、溌溂とした子ども時代があったんだという発見。
圧巻は、竜天山となった林で繰り広げられる俊介とおばあちゃんとの世界。
板絵画家の有賀忍さんの伸び伸びとした世界が、豊かな自然を彷彿とさせてくれます。
有賀忍さんは、かつてNHKの「おかあさんといっしょ」の<こんなこいるかな?>のキャラクターでも有名ですが、本来は板絵画家。
木肌のぬくもりをいかしたあたたかな世界で、物語を彩ります。
老いた己への歯痒さに頑なになる孤独な老人と、空想力と純粋な優しさをもつ少年を深く結びつけたのは、大きな木が生い茂る、竜天山のような林でした。
子どもはもちろんですが、加齢を感じはじめた大人や、老いを前に無力感に苛まれている方にも、ぜひ読んでいただきたいと思います。
西野真由美

『一度きりの人生を笑顔で生きる』◯西野真由美

一度きりの人生を笑顔で生きる 心理学を杖に障碍のある子らと』西野すみれ著
自閉症やアスペルガー。
一昔前までは聞いたこともなかった単語が、日常的に目にするようになった現代。
言葉が目につくだけでなく、発達障碍の子どもたちは、実際に増えているそうです。
心理学を杖に、発達障碍の子どもたちに寄り添ってきた西野すみれさん。
ばあば先生と慕われてきた彼女の、体当たりともいえる日々は、両手を広げて抱きしめる彼女としがみつく子どもたちとの、剥き出しの人間関係の記録でもあります。
わずか三ヶ月あまりで一気に書き上げた原稿は、ずしりと重いレポート用紙。
溢れる想いがペン先からほとばしり、グイグイと惹きつけます。
発達障碍のお子さんをお持ちのお母さんやお父さんはもちろんですが、発達障碍ではない子どもたちの親にとっても、子育ての日々に、心が折れそうになることはあるのではないでしょうか。
そんな時に、本書はくじけそうな心を支え、指針となってくれるでしょう。
プレイボードを使った箱庭療法というのがあるそうです。
問題を抱えている子どもほど、黙々と遊ぶというプレイボード。
ともすると、結果、診断ばかりに気を取られがちですが、あくまでもそれは治療の遊具のひとつ。
目的は、プレイボードで遊ぶことで、ストレスを発散させること。
彼女の師、奥村先生が常々仰っておられる言葉だそうです。
結果を焦らず、目的を見失わず。
己を省みて、ハッとさせられました。
愛情をそそぐことの大切さと、愛情のそそぎかた。
それを教えてくれる本でもあります。
西野真由美

『新渡戸稲造ものがたり』◯西野真由美

今年は、新渡戸稲造の生誕150年です。
8月31日に稲造生誕の地、盛岡で記念式典が行われました。
そして銀の鈴社では、ジュニアノンフィクションシリーズ『新渡戸稲造ものがたり』を刊行しました。
新渡戸稲造は、以前の5000円札の肖像となった人。
樋口一葉の前ですから、今の子どもたちには馴染みがないかもしれません。
新渡戸稲造は、今のユネスコや国連の礎を築いた重要な人物で、英語で執筆した『武士道』で、日本人の道徳心を広く世界に知らしめました。
われ太平洋の橋とならん、という志のもと、まさに真の国際人として、世界の平和に貢献した新渡戸稲造。
日本最初の農学博士として、農業、そして教育にと奔走し、尽力した新渡戸稲造。
アメリカ留学中に出会い、結婚した妻メアリーもまた、稲造を助け、日本での動物愛護運動の先駆者としても活躍しました。
竹島や尖閣諸島など、領土問題に揺れる今、新渡戸稲造の足跡を辿ることで、平和への一筋の道が見えてくるように思います。
東日本大震災後、被災者である日本人の節度ある行動に、世界中から賞賛の声が集まりました。
留学中に、日本ではどのような道徳教育がなされているのか? と聞かれ、その答えを模索しているうちに武士道を記した新渡戸稲造。
日本人の道徳心は、幼い頃から家庭や社会で培われてきた武士道が根幹にあったのです。
道徳の荒廃、マナーの欠落が叫ばれて久しい昨今ですが、あの悲惨な大震災後の状況下で節度ある行動をなさった多くの方々は、稲造が誇りとした日本人の道徳心が消えていないことを証明してくださいました。
幼児教育に英語が必須となりつつある今こそ、真の国際人としての先達、新渡戸稲造を学ぶことは、小手先の教育に心棒を通すことになるのではないでしょうか。
著者の柴崎由紀さんは、本書が処女作。
膨大な資料を読み解き、稲造の足跡を丹念に辿り、ジュネーブにまで足を運びました。
銀の鈴ギャラリーでは、ただいま取材報告展「近代日本に影響を及ぼした人々」を開催中です。(~9月25日 水曜定休)
先日も、新渡戸稲造のお身内の方がお見えになり、とても喜んでくださいました。
下記のブログも、ぜひお楽しみください。
新渡戸稲造博士の足跡を訪ねて
http://inazo-nitobe.blogspot.jp/
西野真由美

江口正子詩集『勇気の子』○西野真由美ブログ

江口正子詩集『勇気の子』(日向山寿十郎/絵 ジュニアポエム双書221)のご紹介です。
『水の勇気』(高見八重子/絵 ジュニアポエム双書205)
『小さな勇気』(高見八重子/絵 ジュニアポエム双書217)につづく、勇気三部作!
全2作のやわらかな高見八重子さんの絵とはガラッとかわって、
日向山さんのちょっとレトロでお洒落な画風。
表題作の「勇気の子」をはじめ、「冷やすな」、「みざる いわざる きかざるの後悔」、など、
イジメ問題と正面から向き合う詩篇など、社会派作品から家族や心を詠う珠玉の詩篇まで35編を収載。
江口さん特有のエスプリのピリリと効いた作品や、日常をハッとする場面で切り取った作品など。
その日の気分で開いたページ。
そんな読み方でも面白く味わえる詩集です。
ひとつ、ご紹介しましょう。 西野真由美
母の灯(あか)り      江口正子
母のいる
その場所は
いつも
いつも
ほんのりと
温かさが 灯(とも)る

『15歳の自由帳 光への階段 PTSDの彼方へ』○西野真由美ブログ

『15歳の自由帳 光への階段 PTSDの彼方へ 歩ける日を夢見て』は、宮下自由くんの韻文(詩、短歌、俳句、狂歌、川柳)と、感想文や作文を収載した、自由帳のような作品集です。
自由くんは、ある日突然、歩くことができなくなりました。
試練の時を経て、今再び歩くことができるようになった自由くんの、本書は、その試練の記録でもあります。
障害のぼくに肩貸す友達にありがとう言えばオスと答える 宮下自由
これは、第16回与謝野晶子短歌文学賞 青春の歌に応募し、約2万首の中から最高賞の文部科学大臣賞を受賞した作品です。
「あとがきに代えて」の中から、お父様の宮下洋二さんの言葉の一部を抜粋します。
PTSD特有の症状なのでしょうか、彼は沈鬱な表情で人に会うのがいやだ、病気が少しも良くならないので悲しい、苦しい、死んでしまいたいと言うのでした。
私が「死ぬのはちょっと待て、おまえが死ぬときには淋しくないように、お父さんも一緒に死んでやるから、神様を信じてもう少し頑張ってみよう」と言うと、彼は「ぼくは神様なんて信じないけど、お父さんは信じる」と言って、私に抱きつき泣くのでした。
自由くんの作品をもうひとつ、ご紹介しましょう。
障害のぼくに友の手ハイタッチ次々受けて父と通学 宮下自由
家族と友達、学校の先生方に見守られて、それでも苦しみもがく自由くんの心の軌跡は、PTSDと闘っている人々はもちろん、思春期の急激に成長する心身のアンバランスを抱える子どもたち、そして疲れ切った大人へも「光への階段」へ導く一冊といえましょう。
追記
宮下自由くんは、宮下木花ちゃんの弟です。
木花ちゃんの創作童話の短編集、『ひとしずくのなみだ』は11歳の作品集。
『いちばん大切な願いごと』は、12歳の作品集です。
阿川弘之さん、秋山ちえ子さん、永六輔さん、城山三郎さん、志茂田景樹さん、立松和平さんなど、多くの方々に賛辞をいただき、群馬県文学賞を最年少で受賞しました。
ことに、処女作所収の「ノロボトケ」などは、思い出しても鼻の奥がツーンとなります。
お近くの図書館へリクエストして、ぜひ読んでみてください。
西野真由美

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