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銀の鈴社は、〈花や動物、子供たちがすくすく育つこと〉を願って活動しています

奥むめおものがたり 女性解放への厳しい道を歩んだ人◯西野真由美

『奥むめおものがたり  女性解放への厳しい道を歩んだ人』ができました。
主婦連(主婦連合会)をつくった奥むめおは、平塚らいてう、市川房枝らとともに、近代日本の女性史に欠かせない方です。
読経が流れる機織りの町、雪深い福井に生まれ育った奥むめお。
やがて機織り女工の過酷すぎる生活を体験し、労働問題に目覚めていきます。
赤ちゃんを背負いながら、女性解放への道を歩み始め、セツルメントという地域に根ざした社会事業や機関誌発行に 奔走する戦前。
主婦連合会をつくり、 参議院議員になって、女性解放のための法案可決に邁進し、おしゃもじをシンボルに活躍した戦後。
少し前なのに現代とはずいぶん異なる様子は、着物姿での演説姿などの写真たちが伝えてくれます。
著者の古川奈美子さんは、奥むめおの参議院議員時代の秘書でした。
古川さんは昨年の大震災後、「こうしてはいられない、私にはどうしてもしなければならない仕事がある」と奮い立ちます。
いつかは奥むめお先生を書かなければという長年の思いを抱えながら、家族の介護に追われる日々だった古川さん。
古川さんの誕生日は3月10日。3月11日、東日本大震災の惨劇を目の当たりにして、宿題の「奥むめおものがたり」を書かなければと、翌3月12日から始まった執筆は、夜が更けてから。
ご主人の介護の日々での執筆を支えたのは、敬愛する奥むめお先生を伝えのこしたいという強い想い。
奥むめおのご遺族や主婦会館のみなさまなど、多くの関係者のあたたかなご協力もまた、刊行を促してくれました。
長年抱えてきた敬愛の念が、一気に噴き出るように書かせた『奥むめおものがたり』。
近代日本の女性史そのもののような奥むめおの生涯を辿りながら、心に期して生きることの気高さ、強さ、今にいたるその恩恵にも思い至る一冊といえましょう。
西野真由美

『小学校作文の鑑賞』○西野真由美

『小学校作文の鑑賞 -文集が誘う個性と文種-』白石壽文・権藤順子/編著のご紹介です。
夏休み。
いつもとは違う様々な経験をし、成長する夏。
夏休みの経験を文章で表現し、文集にまとめて鑑賞し合う。
ひとまわり大きくなった子どもたちとの2学期に向けての一冊です。
本書は、小学校の教育現場で、日々子どもたちと向き合いながらの文集活動の実践提案。
気軽に発行し、伸びやかに鑑賞し合う、手作りの、表現の遊び場としての「文集」。
編者、白石壽文先生のお言葉です。
児童によっては、物語は得意だけど説明文は苦手、短い文章はいいけど長文は苦手など、実態や意欲が異なります。
自分が表現したいものは、どの文種がふさわしいのか、目的や相手に応じて自在に選ぶためには、幼い頃から様々な文種に出会わせることが大切。
その出会いの場を、いかに設定するのか。
先生方の個性と児童の実態に合わせた文集と文種の組み合わせ。
30名の執筆者による色とりどりの指導記録が、新たな気づきへと導いてくれるでしょう。
西野真由美

『あすかちゃんのビーチボール』○西野真由美

『あすかちゃんのビーチボール』のご紹介です。
ゆうびんうけにはいっていた、あすかちゃんのビーチボール。
名前はリナちゃん。
風にのってとんでいったリナちゃんが、あすかちゃんの家のゆうびんうけへ帰ってくるまでの、ふしぎで楽しいお話です。
子どもが大事にしているお気にいり。
ぬいぐるみだったり、ミニカーだったり。
そんなお気に入りのビーチボールに名前をつけていたあすかちゃん。
ミルンの「くまのプーさん」のように、幼い子どもにとっては、そんなお気に入りとの毎日は、とっても大切なものです。
リナちゃんの冒険のように、我が子のお気にいりを主人公にして短いお話ができたら、また素敵ですね。
作者のだんちあんさんは、今後とも「小さき者への賛歌」として作品を追求していきたいという元小学校教諭。
たくさんの制約の中で、日々子どもと寄り添う教育現場の先生方。
熱気ムンムンのお話には、子どもたちへのあたたかな眼差しがあります。
絵は、太田一希さん。
ちょうどご結婚もされて、おめでたい記念の1冊となりました。
鈴の音童話・小学校低学年以上対象です。
西野真由美

『魅せられて -太陽の国から心の里へ-』布ぞうがん・感じる絵本○西野真由美

表装の技法をいかした「布ぞうがん」の作品集。
早水瑞枝さんの『魅せられて -太陽の国から心の里へ-』は、画集のような<感じる絵本>。
豊かな心は、命の厚みになります。
豊かな心は、細やかな森羅万象に呼応する感性そのもの。
豊かな人生、幸せな人生、やさしい心、思いやりのある心。
子どもから大人までの感性をみがく、<感じる絵本>の誕生です。
インドの仕立屋さんからの端切れやネクタイ、時にはご主人の着物の端切れまで。
たくさんの布たちの声に耳を澄ませて、細やかに刃先を操りながら生まれてきた作品たち。
作者の早水瑞枝さんのご主人は、鎌倉の妙本寺さんの貫首さま。
ご主人の着物の端切れは、意識したわけではなかったのに、気づけば仏塔になっていたそうです。
表装(表具)は、布や紙を貼って、巻物、掛物、書画帖、屏風、襖(ふすま)などに作り上げることです。
布ぞうがんは、布を素材に表現する新しい布絵(装芸画)です。
布には、それぞれの国の歴史や文化が染みこんでいて、小さなはぎれ一枚の向こうには、果てしない時間の宇宙がひろがっています。
布そのものの魅力、やさしさ、あたたかさ、力強さ、繊細さ、そして自然の恵みをいただいて、糸を紡ぐ人、織る人、染める人たちの想いがつまっています。
素材だけでなく、古来から地道な職人たちの、手塩にかけた表装という技法は、極めれば極めるほど奥深い、魂の結晶です。
銀の鈴社ギャラリーでは、この冬、11月30日(金)~12月9日(日)まで、本書の刊行記念展を開催します。
本展は、湘南邸園文化祭参加イベントでもあります。
絵本で感じたら、どうぞ銀の鈴ギャラリーで、現物の作品世界を堪能してください。
西野真由美
<ご案内>
早水瑞枝 布ぞうがん作品展
『魅せられて』
場所:銀の鈴ギャラリー 入場無料
会期:2012年11月30日(金)~12月9日(日)
時間:10:00~17:00 水曜定休

掌の本アンソロジー◯西野真由美

文庫本半分の、手のひらサイズのお洒落な詩集ができました。
テーマ別の詩を公募したアンソロジー。
第1回のテーマは4つ。
ありがとうの詩1
いのちの詩1
こころの詩1
しぜんの詩1
見開きで1篇の詩篇は、子どもから大人までを対象にしたフリガナつき。
銀の鈴ギャラリーでは、ただいま「掌の本 刊行記念展」を開催中です。
一昨日のことです。
自転車を停めて、しばらく窓越しにギャラリーを凝視してからご来場になった女性がありました。
展示されている詩篇や本をゆっくりご覧になり、『ありがとうの詩1』2冊と『渋沢栄一のこころざし』をお求めくださいました。
その方はなんと、渋沢栄一さんの玄孫(やしゃご、ひ孫の子ども)だそう。
90を越えたひ孫のお母様をこの一月に見送られたそうで、掲示している『ありがとうの詩1』収載作品(三好清子「ことばは魔法」)に釘付けになって、と。
クリスチャンだったお母様は、ご葬儀でのメッセージにも「ありがとう」を選ばれ、よく「ありがとう」を口にされたそうです。
最期の数年は寝たきりで、
「退屈じゃない?」と聞いたら、
「退屈であるはずがないでしょう。
だって私、考えることができるんですもの」
と即答されたと。
渋沢家伝来の伸びやかな教育方針のもとで、豊かな子ども時代を過ごされたお母様は、よく子どもの頃を思い出されては楽しんでおられたそうです。
豊かな子ども時代の大切さを語り合いながら、ご両親の介護に東京から何年も毎日のように鎌倉へ通ったというその方は、でも、とても楽しい毎日でした、と。
後光がさしているかのようなその方の柔らかな微笑みに包まれて、幸せのお裾分けに涙ぐみながらお見送りをしている私でした。
<追記>
掌の本アンソロジーの、第2回募集要項ができました。
ご希望の方は、銀の鈴社までご連絡くださいませ。
投稿規約などを郵送させていただきます。
西野真由美

念願の復刊『100人で鑑賞する百人一首』◯西野真由美

四十年ほど前に刊行された名著『100人で鑑賞する百人一首』を、この春復刊しました。
学者や評論家、歌人など、当時の第一人者100名が、一人一首を鑑賞した本書は、当時大妻女子大学教授だった、和歌を主とする中古文学研究で著名な武田元治先生の語釈を得ての話題の書でした。
この春改定された各社の中学の教科書に採用され、残り少ない在庫を前に、思い切って重版をと、武田元治先生にご相談したのでした。
元治先生はとても喜んでくださり、重版ではなく、復刊となさった方がよろしいでしょうとご教示くださいました。
現在の百人一首研究の第一人者、吉海直人先生にお言葉を賜り、できたての本書を元治先生にお届けしたのが三月。
翌月にあちらの世界へ旅立たれた元治先生に見届けていただけたことは、今でも私の救いです。
同志社女子大学教授の吉海先生は、本書を手にしたのは
二十歳だったと述懐されておられます。
我が家での百人一首は、お正月の遊びでした。
万葉集と百人一首が大好きな祖父が、いつも読み手です。
旧仮名遣いや聞き慣れない言葉も、お正月のカルタ遊びはそんなもの、と自然に馴染んでいたように思います。
(残念ながら、あらかた忘れてしまいましたが)
百人一首の札を囲んで楽しそうだったのでしょう、愛犬ラッキーがヤキモチを妬いて、札の上に腹ばいになり、笑いとともにお開きになったこともありました。
祖父だけは最後まで読みたかったようで、少々憮然としていたのも、懐かしい思い出です。
カルタ遊びでも坊主めくりでも、百人一首をご家庭で楽しめるといいなぁと思います。
そして、どんな和歌なのだろうと話題になったとき、本書はバイブルのように、きっとお役に立つことでしょう。
西野真由美

『孔雀のブローチの秘密』◯西野真由美

渡邊るり子さんの三冊目、『孔雀のブローチの秘密』のご紹介です。
『友ちゃんと砂糖、そして…』『すずめの木笛』
前二作品同様、北九州郊外を舞台に、子どもの視点から捉えた終戦前後を描きます。
お父さんのお姉さん、満州おばちゃん。
離れで臥せっている大好きな満州おばちゃんの秘密。
教科書にない満州という国を調べるうちに、戦争を、引き揚げという意味を知っていくよし子。
新盆を迎える家の前で、供養に踊る盆踊り。
盆踊りは、夜まで友だちと踊り遊べる絶好のイベントです。
今年は新盆の家がいくつもあるからたくさん踊れる、と喜ぶよし子を、そんなに喜んではいけないと、静かにたしなめる満州おばちゃん。
おばちゃんが亡くなって新盆を迎える時に、かつての自分のように浮き浮きと喜んでいる友だちを前に、怒りを爆発させるよし子。
戦争を、その悲惨さを、そして命あること、死ぬということを、よし子の視点で、丁寧に想いを込めて描かれた作品です。
作者の渡邊るり子さんは、二作目の『すずめの木笛』を病院のベッドで校正なさいました。
この『孔雀のブローチの秘密』は、渡邊るり子さんがもっとも大切にしていた作品でした。
彼女の一周忌を前に、こうして上梓できましたこと、ご遺族とともにほっとしております。
渡邊るり子さん、貴女はこの三作で、子どもの視点から終戦前後を描くことで、平和への真の祈りを、今の子どもたちに伝え遺すことができたのですね。
私たちは、貴女から受け取ったバトンを大切に、次の世代の子どもたちへ渡していきます。
どうぞ安らかに、いつもの笑顔で、見守ってくださいませ。
合掌。
西野真由美

『負げねっちゃ』の旅立ち◯西野真由美

手のひらサイズの小さな句集『負げねっちゃ』
大震災五七五の句集というサブタイトルのように、想いを五七五にして、いつもの言葉で吐き出した句集。
方言で詠まれた句たちは、読むものに明日へ向かう勇気をくれる句集でもあります。
宮城県名取市の方言を語り残そう会の方々が、避難所の方々とともにつくったこの句集には、苦難の日々と、そこから立ち上がろうとする人々の気概がぎっしりと詰まっています。
今まで、絵本や詩集、童話などの自社の本や、みなさまからお届けいただいた手づくりバッグなどを、被災地へお贈りしてきました。
クレヨンハウスの落合恵子さんのHUG & READへも、銀の鈴社の本たちをお贈りしました。
クレヨンハウスさんとは、かつてCBLの会で長くご一緒に活動した版元同士でもあります。
そのHUG & READも、活動を終了しました。
http://hugread.blogspot.jp/p/blog-page_14.html?m=1
被災地の書店の復興を阻害しないだろうか、というご指摘は看過できません。
『負げねっちゃ』は、印刷製本を被災地でつくった句集です。
長年お世話になっている印刷所さんではなく、被災地でつくっていただくことが被災地の産業支援の一歩になると始めました。
小さな銀の鈴社がはじめた小さな一歩。
その『負げねっちゃ』、今日までに以下の各紙でご紹介いただいています。
朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞、東京新聞、神奈川新聞、図書新聞、新文化通信、鎌倉朝日新聞、タウンニュース、鎌倉ケーブルテレビなど。(順不同)
銀の鈴ギャラリーでの展示会は今月末まで。
展示された句に見入りながら嗚咽する方や、三日間連続で来られた方など。
三日間連続で来られた方は、リュックを背負った初老の男性。
初日に買ったご自分用の本を見た友人から頼まれたと、二日目。
三日目は、違う友人を伴ってまたご購入くださいました。
句の展示は今月末までですが、本は奥のミニライブラリーでいつでもご購入いただけます。(水曜定休)
西野真由美

武田元治先生とのお別れ◯西野真由美

解釈学会の名誉会長、大妻女子大学名誉教授の武田元治先生がお亡くなりになりました。
いつも柔らかな笑顔でお導きくださった武田元治先生は、柩の中でもそのままの穏やかなお顔でした。
にこやかに微笑みながら煙草をくゆらせ、背筋をピンと伸ばして、英國屋のスーツをシャッキリ着こなしていらした元治先生でした。
子どもの頃に聞いた元治先生の落語。
どんなお話だったのかは定かではありませんが、旅館の大広間の舞台で、お座布団にまっすぐ座られた元治先生のお姿が、普段とのギャップがありすぎたのか、何故か思い出されます。
あの頃は、地方での解釈学会の夏の全国大会が、唯一の家族旅行でした。
研究発表の長い時間を、どうやってやり過ごしたのか、流石に記憶にありませんが、旅館やお寺に泊まったことなどは、断片的に覚えています。
元治先生の落語姿も、そんな一場面。
桜散る春の日のお別れは、先生が研究されておられた西行さんの歌を思わせてくれました。
かつて身を引きたいと申し出た時に、お身内としてぜひとも残っていただきたいと元治先生にいわれ、退くことを留まったこと。
この3月上旬にいただいたお葉書にも、これからも解釈学会を支えてくださいとありました。
まるでご遺言のように思えます。
『100人で鑑賞する百人一首』。
元治先生にその復刊を見届けていただけたことだけが、今となっては私の救いです。
とても喜んでおられたと息子さんから伺い、最後のご挨拶では、解釈学会のことを話す時の父は、いつも楽しそうでした、とも仰っていただきました。
息子さんのご挨拶のように、あちらにいかれた元治先生は、藤原俊成さんにあれこれお尋ねなさっておられるかもしれません。
大好きな元治先生、さようなら。
そして、どうもありがとうございました。
西野真由美

電子化と音訳◯西野真由美

先日、全国音訳ボランティアネットワーク代表の藤田さんが、伊藤忠財団の矢部さんといらっしゃいました。
藤田さんは、丸田かねこさんの絵本『はこちゃんのおひなさま』のご縁。
その丸田さんから、藤田さんのブログに、銀の鈴社訪問のことがありますとお教えいただきました。
全国音訳ボランティアネットワークの藤田さんのブログです。
http://onyaku.net/fujita-2012.html
教科書以外にもたくさんある豊かな本の世界を、視覚障害のある子どもたちに届けたい。
藤田さんと矢部さんのお話に、真摯な姿勢に心響いたひとときでした。
思えば、電子化を進めようと決めた大きな要因も、視覚障害の方々への道がありました。
弱視の方でも、電子書籍ならば文字サイズを大きくして、本の世界を楽しめる。
担当のユニシスの内海さんに、そうお教えいただき、必要性を痛感したのでした。
西野真由美

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